引きこもりからやり直し −歌で伝える米田浩司さん−
「人に会いたくない。人に見られるのが怖い」と家に引きこもる人が日本で増えている。その数は、100万人に迫る勢いだとも言われている。米田浩司さん(32)=ぶどうの木国際教会宣教師=は、16歳の時に「引きこもり」になった体験をもつ。しかし、一人のアメリカ人を通じてイエスと出会い、引きこもりから完全に解放された。現在、米田さんはギターを抱えながら日本全国の教会、施設などを回り、自作のゴスペルソングを歌いながら当時の体験を話す。CDも「心の扉」「Testimony」と2枚リリース。「心の時代」と言われる今、その証しと歌が人から人へと伝えられ、今、静かな反響を呼んでいる。
「春の風優しく夏を運ぶ頃 野山のタンポポが綿毛を咲かす。…吹く風に身を任せて風の吹くままに 運ばれたその場所で花を咲かすだけ」 「タンポポの唄 」という曲の1節だ。旅先で見た光景を、米田さんが歌にしたものだという。「新宿駅前でボーッとしていた時に、たまたまコンクリートのすき間に咲いているタンポポを目にしたんです。たぶんこのタンポポは、新宿に根をおろしたくなかったのだろうと思ったんですね。でも、その場所で小さな花を咲かせている。それにすごく励まされました」 神様が示された場所で、精一杯花を咲かせるタンポポ。コンサートで「タンポポの唄」を聞き、「この歌に励まされ、慰められた」と言う人は多い。
しかし、「昔はこのタンポポの姿とはかけ離れていた」と米田さんは振り返る。「なんでこんな生活を送らなければならないのか、と不満の多い生活でした。人と自分を比較しては劣等感にかられ、落ち込んでしまう。そんな繰り返しでした」
引きこもりのきっかけは、野球の道が閉ざされたこと。小学生のころから野球に打ち込んでいた米田さんは、高校も野球をするのを目的に選んだ。しかし練習中に目にけがをし、その後頭痛や肩こり、背中の痛みに悩まされるようになった。
とうとう、学校にも行けなくなり、野球もやめざるをえなくなった。「自分が情けなかった。そんな姿を見られるのが嫌で、人目を避けるように引きこもり生活に突入していきました」
昼夜逆転の日々が2年続く。不規則な生活で自律神経に狂いが生じ、うつ状態にもなった。次の2年は社会復帰を目指し、大検、アルバイトなどで頑張った。だが、長続きしない。ついに切れた。「ひもみたいなものが、頭の中でプチンと音をたてて切れる感じだった」という。
「逃げ出したい!」そう考え、英会話の修得を口実にアメリカに渡った。そこで、留学生伝道をする1人のアメリカ人と出会う。彼はイザヤ書43章4節を引用し、米田さんをこう励ました。「浩司、神さまはいる。そして一人ひとりの人生に道を備えてくださっている。その道には試練があるけれども、それさえ、その道を歩む者のベストを思って備えられたもの。だから恐れず、逃げずに生きてほしい」。その言葉に押し出され、米田さんはキリストを信じた。
あれから10年あまり。米田さんは今、音楽宣教師として、ギター片手に全国を回る。「CDを販売させてくれるなら、どこにでも行きます。たった一人のためにでも歌います」が信条だ。
千葉県市川市の聖望キリスト教会(大竹堅固代表)で5月22日に開かれたコンサートでは、歌を聞いた人たちから「周囲に引きこもりの子がいる。彼らに米田さんの歌を聞かせてあげたい」との声があちこちから上がった。
最近は、引きこもりの家族や友人からの相談、個人訪問の依頼も多いという。そういう子や親に対し、「人生が終わりと思わないで。必ずやり直せます」と米田さんは伝えている。「攻撃的な子に会うと、昔の自分を見る思いがします。彼らは私にとって隣り人。自分の経験を通し、神様を伝えていきたいですね」
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